ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ 2009年ヴィンテージ【宮武酒店.com】

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Domaine de la Romanee-Conti

2009年ヴィンテージ

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2009年10月に記述による

 太陽の光が強い年は、ブドウをじっくりと熟させ、発酵が終わってワインになるまで輝き続けることが多い。今年、2009年もそうだった。9 という数字は太陽と結びつけられることが多く、9 がつく年は太陽に恵まれることが多いのだ。収穫が終わると、インデアン・サマー(9月、10月に夏のような暑さが続く時期)がやってきたが、収穫を終えたブドウの樹は身軽になって非常に生き生きとして、「光の衣装」をまとうかの如く葉は毎日少しずつ黄金色になっていった。それはまるで夏日を懐かしく思い起こさせるかのようだった。そしてその葉は、地面に落ち土壌の栄養となる。

 太陽の下に延々と広がる村々の醸造所はにぎやかに活気を帯びていた。ヴィニュロン(ブドウ栽培家)たちは、発酵中のタンクに香りをかぎながら、今年は天の恵みを与えられたこと、素晴らしいヴィンテージのことを予感し微笑むのだった。

 しかし、全てが簡単に進んだわけではない。その逆である。通常、ブルゴーニュのヴィニュロンたちは1年間不安定で予想できない気候(しかし、時としてそれは偉大なワインを生むこともある)と戦い続ける。最後の最後まで、勝利する確信を持てない。例えば、2008年の場合は、9月中旬に良好な天気が続く兆候が見られるまで、気候との戦いに勝利できるとは分からなかったのだ。一方、それとは対照的に、珍しいことではあるが、例えば1999年、2005年、2009年のように、8月初旬という、より早い段階で勝負がつくこともあるのだ。それにしても、ヴィニュロンたちは、春から7月末までと同様に、うどん粉病、ベト病、そしてボトリティスの激しい攻撃と戦っていて、天候との戦いに早い段階で勝負がついたということは分からないのである。

 近年の大抵の年と同様に発芽が早く、4月〜6月、そして7月でさえも、雷雨が頻発し、病気を誘発する天候が続き、ヴィニュロンは全く落ち着くことができなかった。しかし太陽は輝き続けていたので、ブドウの樹の活動が止まることは一切なかったが、暑さによりほぼ毎週のように雷雨に見舞われた。幸い、雷雨が激しすぎることはなかったが(雹が降ったジュヴレ・シャンベルタン村などは別として)、雨が降るたびに病気を防ぐための策を改めて練らなければならなかった。

 しかし、この春に降った雨による水分の蓄えがあったため、8月から収穫期まで続いた日照り(8月15日の雷雨を除く)の際に、ブドウの樹に過剰なストレスが及ぶことはなかった。春の蓄えにより水分のバランスが保たれたおかげで、葉が“糖分工場”の役割を十分に果たすことができ、ブドウは見事に熟したのである。

 長年選果経験をつんだ収穫チームは、ブドウが自然の恵みでほぼ完璧な状態にあることを見極め、我々の追求しているフィネス(繊細さ)を得るため、二回目の収穫時に摘む分として、房の多い樹や若過ぎる樹のブドウは残しておいた。

 結果として、選果台に運ばれてきたブドウは今まで見たものの中でも最も美しい出来の一つであった。1999年や2005年と同様に小さな房やミルランダージュ(極小ブドウ)が多くあり、グレートヴィンテージの証拠でもある現象として、普段多くの実を付けない古い樹から、たくさんの小さなブドウの粒が収穫されており、ピノ・ノワール種の中でも最も繊細なピノ・ノワールの、見本となるような出来であった。

 また、グレートヴィンテージのもう一つの典型的な現象が見られた。つまり、日に当たっていた粒は焼けて、ほぼ凝縮された糖分を含んでおり、その濃縮された糖分は発酵の最終段階にしか出されなかったため、ワインは発酵中に自然に段階的に凝縮していき、最終的に見られた凝縮感は発酵が始まった段階よりも増していた。

 収穫量は多かった。花の数は多く、結実も見事で、1999年や2005年と同様だった。

収穫は、下記の順番で行われた。
9月10日:コルトン(ヴォーヌ・ロマネより成熟が明らかに早かった)
9月13日:リシュブール
9月14日:ロマネ・コンティ
9月14日ー15日:ラ・ターシュ(樹齢8年の樹のブドウさえも非常によく熟しており、グラン・クリュのキュヴェに入れることにした)
9月15日ー16日:ロマネ・サン・ヴィヴァン
9月17日ー18日:グラン・エシェゾー
9月18日ー19日:エシェゾー

モンラッシェ:年間のピノ・ノワールとシャルドネの成熟は奇妙でいつもと違っていた。シャルドネの開花はピノ・ノワールより非常に遅かった(一週間以上も)が、開花時の遅れは夏の間に縮まらなかったものの、収穫直前の最後の暑い二週間の間にほぼ取り戻された。モンラッシェの収穫を9月15日に行い、そのとき赤の収穫はまだ終わっていなかった。粒は美しく黄金色で完熟しており、要するに見事で、言葉にできないくらい美しさであったため、今まで作ったモンラッシェの中で最も偉大なワインにあることを強く望んでいる。

 この文章を書いている10月7日現在、現在は発酵がゆっくりと規則正しく進んであり、自然に高温度に達している。ブドウの品質の“核”となる部分の充実度合いが高いため、時間をかけて長い発酵を行うことができる。色は深いガーネット色で、ほぼ黒に近い。収穫された見事なブドウのレベルにふさわしい、素晴らしいヴィンテージのワインがタンクの中で生まれようとしていると感じ取れる。

クリュごとの瓶詰めは下記の日程でおこなわれた。
ロマネ・コンティ:2011年3月21日〜23日
ラ・ターシュ:  3月2〜3日、15日〜17日
リシュブール:  2月25日、28日、3月1〜2日
ロマネ・サン・ヴィヴァン:  2月21日〜24日
グラン・エシェゾー:  2月14日、17〜18日、21日
エシェゾー:  3月28〜31日
コルトン:  3月24〜25日
ヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュ:  3月31日、4月1日

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瓶詰めから9ヶ月後

 2009年というのは偉大なヴィンテージだと再確認した。それには2つの理由がある。第一に、生産量はこのAOCで造れる最大量であった(25〜32hl/ha)。第二に、ここ20年に見られたヴィンテージの中で、最も魅力的な年の一つになりうるやわらかさとハーモニーがあり、最高の品質に至っている。結果、ヴィニュロンも飲み手も微笑んでしまう。

 この2009年の2つの特徴、つまり、量の多さと品質の高さは、もう一つの伝説となっているヴィンテージである1959年を思い出させる。この1959年も偶然にも9で終わるヴィンテージで、2009年とはちょうど50年離れているのだが、零囲気、性格ともに非常に似ている。1999年や2005年などは、非常に力強く男性的で凝縮しており、もっと言えば強烈な印象を与えた。一方で2009年は、同時期の1959年のように、柔らかく、女性的で、チャーミングさに満ちている。

 樽熟のときも、瓶詰めから9ヶ月経過した今の時点でも変わらず、前に述べた魅力を持っている。このあと、ワインは青年期に入り、その魅力も閉じてしまうのだろうか。我々はそうは思わない。

 ワインの複雑さが伝わるように説明することも、どのように変化していくかを予測することも、いつも簡単ではない。以下に述べる簡素なテイスティングノートは、今までで一番期待のできる出来の一つだと思っているワインに対して、簡単な紹介にしかならないかもしれないが、それでもその説明をしようと試みたものである。

 そしてこの2009年というヴィンテージは、初めてコルトンを造った年でもある。コルトンは、「クロ・デュ・ロワ」「ブレッサンド」「ルナルド」のヴィエイユ・ヴィーニュ(古樹)のブドウを一緒に醸造したものである。この3つの畑の若い樹については、十分に年を重ねたときに、畑ごとに別々の醸造を行うつもりだが、3つの畑のヴィエイユ・ヴィーニュのブレンドはグラン・クリュのAOCにふさわしい見事なコルトンを生み出したと考えている。テイスティングをすれば、それが証明されると信じている。

 全てのワインは深く美しいガーネット色をしている。ヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュは全体に比べやや淡く、コルトンは逆にインクのような濃い色合いをしている。どのワインの香りも味わいも凝縮感、高い熟度がありながらフレッシュさもある。

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テイスティングノート

■ヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ 2009
 透き通ったきれいなローブ、フレッシュな赤い果実の開いた香り。非常に心地よい口当たりで、ヴィンテージの特徴的なチャーミングさを持っている。

■コルトン 2009
 湿った土、純度の高い土を思わせる香り。インクのような色合い、固くて凝縮した香り、しかし、口に含むと若さによる近寄りがたさの背後に、官能的なやわらかさが横たわっているのが感じられる。

■エシェゾー 2009
 美しく濃いローブ、香りは良いバランスを見せ、タンニンと酸のストラクチャーもよくできている。このヴィンテージの典型的な味わいであり、閉じているものの、肉付きがよく、熟成が期待できると思わせる深みを持っている。

■グラン・エシェゾー 2009
 美しく濃いローブ、エシェゾーに比べ厚みがある。力強いストラクチャー。コショウのニュアンスとともに、グラン・エシェゾーに典型的な控えめなエレガントさ、すばらしく長く続く余韻。

■ロマネ・サン・ヴィヴァン 2009
 ガーネットのような美しい色合い。この畑のワインに期待されるほのかに青いニュアンスを持っているが、フレッシュな赤い果実の存在も感じる繊細で上品な香り。口に含むと、まず洗練されたテクスチャー、続いてロマネ・サン・ヴィヴァンの畑の土壌の深さを感じさせ、なおかつたっぷり栄養を与えられたかのような厚みも現れる。

■リシュブール 2009
 きれいなローブ。力強いがフレッシュで、ミネラル感があり、カシスの芽のような香り。クラシックなリシュブールの口当たり、さわやかさとエネルギーを感じるが、ワインはまだ成熟するのに時間を要する繊細なタンニンで閉じられている。

■ラ・ターシュ 2009
 ガーネットのような濃いローブ。凝縮されているが、控えめな香り。黒い果実。なめらかで厚みがあり、芳醇さ、豊かさを持った口当たり。ラ・ターシュらしく、複雑味とやわらかさが調和している。つまり、高貴で凝縮し、真っ直ぐでありながら肉付きがよく力強いが、完全には開いていない。

■ロマネ・コンティ 2009
 このクリュにしては驚くほど濃い色合い。ロマネ・コンティの香りに期待する要素が見事に揃っている:非常に良く熟したブドウやブラックチェリー、熟成するとバラの花びらのようなニュアンスになるスミレやカシスの芽。何よりも、このワインがロマネ・コンティであることを説明する必要がないほど、なめらかでありながら密度の高い口当たり。そして何の荒さも感じさせないシルキーでやさしい余韻。最後まで繊細な印象を受けるがそれは細かく説明しなくてもいいだろう。

■モンラッシェ 2009
 今のところ、最近のヴィンテージで感じていた表現力の豊かさはない。その豊かさは、存在感がありつつも既にある程度溶け込んでいる酸に押さえられている。それは長く熟成できる証拠である。ミネラル感を持っているため線が細いと思わせるがそれは間違いであり、数年熟成させなければならないワインである。今のうちからフレッシュさやエレガントさは楽しめるが。

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